2013年4月7日日曜日

[どうぶつしょうぎ] 完全解析

どうぶつしょうぎは、東京大学情報基盤センターの田中先生によって完全解析が行われており、 後手必勝であることがわかっている。

これによると
  • 初手「B2ひよこ」なら後手76手勝ち
  • 初手「C3きりん」なら後手78手勝ち
  • 初手「C3ライオン」または「A3ライオン」なら
    後手78手勝ち
という結果になっている。

意外なことに初手によってほとんど差が出ない。
むしろ先手最善と思われる「B2ひよこ」が最短になっている。

到達局面は2.5億局面ほどあるそうなので、先手の応手まで全部覚えきれるわけはないのだが、 とりあえず手順を見てみることにしよう。
各初手からの最短(先手から見たら最長)手順は以下に記載されている。

一番ありそうな「B2ひよこ」からの相腰掛ぞう基本定跡を見てみよう。 局面の読み方はこちらから。


B2ひよこ後手勝ちの最短手順: 相腰掛ぞう基本定跡


△A2きりん まで
この手順を見ると後手はものすごく細い一本道を間違えずに進む必要があることがわかる。
後手はいろいろな指し手があるにもかかわらず20手目までは、 「勝ち」につながる手は1つづつしかなく、選択の余地がない。
それ以外は先手勝ち局面に転落してしまう。
 22手目にして初めて勝ち手順が3つ出現する。

序盤戦を見てみよう。

▲B2ひよこ、△同ゾウ、
▲B3ゾウ、△A2きりん

いわゆる先手一手損ぴよ替わりから後手はキリンをついていく。
先手もキリンを突くのが一般的そうだが
▲A2同ゾウ とキリンをとるのが最善。
キリンを突く手は「50手先手負け」で最善手より
26手ほど早く負けてしまう。
むしろ「A4ひよこ打」のほうがましという結果に。



強手 △B2ひよこ打


△B2ひよこ打 まで
「▲A2ゾウ」以下は「△同ライオン」、
「▲B3キリン打」、「△C2ゾウ打」
「▲B2キリン」、「△同ライオン」
とそれらしい手順で進む。

「▲A3ゾウ打」、「△A2ライオン」、「▲C3キリン」。

ここで「△B1ゾウ」などとゾウが逃げると先手勝ち局面になってしまう。
当たりのゾウを放っておいて「△B2ひよこ打(!!)」の強手。
これ以外は負け。 先手は 「▲同ゾウ」と抵抗(これでもあと60手で負けるのだが)する。

ちなみに、「△B2ひよこ打」に「▲C2キリン」と後手のゾウをとるとあと20手で先手負けになる。

ちゃんと調べてないが、「△B3キリン」が厳しい一手で、以下「▲C4ライオン」は「△A3ライオン」以下後手トライ勝ち。
「▲A4ライオン」としても「△A3キリン」でゾウ損を回収され、以下「▲B4ライオン」、「△B3キリン」以下一方的な展開になりそう。

先手は「▲B2キリン」とゾウをとらずに「▲A3ヒヨコ打」とライオンを追う変化も有力。
この場合の展開は以下の記事を参照。


一本道をぬけて中盤戦へ

▲B4ライオン まで

▲B2同ゾウ、△同ライオン、
▲B3ひよこ打、△B1ライオン、
▲A3ライオン、△A2キリン、
▲B4ライオン


ここまで後手は一本道で一手間違えただけで先手勝ちに代わってしまう。

次の22手目にして初めて後手に複数の勝ち手の選択肢が現れる。
「△A3ゾウ打」が最善かつ分かりやすい手。
他は「△A1キリン」や「△C1ライオン」の妥当な手も少し手数はかかるが勝ちになる。






ゾウ-ひよこ交換で局面打開


△B2ゾウ まで
△A3ゾウ打、
▲A4ライオン、△C1ライオン、
▲C4きりん、△B2ゾウ(!)

ひよこ頭にA3のゾウが下がる。
ここは他にもB1ライオンやB1ゾウといった手があるが、 これらの手では次に▲C3きりん以下千日手模様になるので、 ▲B2同ひよこ、△同ライオンで局面の打開を図ル必要がある。
「▲B2同ひよこ」で駒割りは互角に戻る。

△B2ゾウは先手キリンがC4に下がっているから成立するのであって、
手順を省いてC3のまま仕掛けると、
▲同ひよこ、△同ライオン、▲C2キリンでひどいことになる。

先手は ▲A4ライオン に替えて ▲C4ライオン とキリン下に寄って ▲A4ヒヨコ打 を狙う筋もある。
この変化は、以下の記事を参照。


ツークツワンク


△A1きりん まで

▲B2同ひよこ、△同ライオン、
▲C3ゾウ、△A1ライオン( B1やC1ライオンでも後手勝ち)、
▲B4ゾウ、△B3ひよこ打、
▲C3ゾウ、△B1ライオン、
▲A3ひよこ打、△A1キリン、

ここで先手は手詰まり。
悪手しかない状態、いわゆるツークツワンクになる。
どうぶつしょうぎは盤面が狭くコマも少ないのでこういう状況がまま出現する。

先手はやむなく ▲B4ゾウ。

△A1ライオン の局面では 先手側に ▲A3ヒヨコ の反撃がある。
△B2キリン、▲同ゾウと進み後手勝ちになることは変わらないのだが、 紛れるので 同手数なのだが △A1ライオン よりは △C1ライオン の方が良いと思う。
▲A3ヒヨコ、△A1キリン 以下自然に本譜に合流する。





後手勝勢へ

▲A2ひよこ まで


▲B4ぞう、△同ひよこ成、
▲同ライオン、△B3ゾウ打(B2ゾウやB2ライオンでも勝ち筋)、
▲C3キリン、△B2ライオン、
▲C2キリン、△同ライオン(同ゾウでもOK)、
▲C3ひよこ、△B2ライオン、
▲C1ゾウ打、△同ライオン、
▲B3ライオン、△B1ライオン(B2キリンやB2ゾウなどでも勝ち)、
▲C2ゾウ打、△C1ライオン、
▲A2ひよこ、

ここで単に△B1キリンと避けても勝ちだが、
先に△B2キリン打と王手ひよこ取りの方が2手早く勝てる。

△B2キリン打、
▲B4ライオン、△A2キリン上、

この時点で後手は ゾウ得 になっていて完全に勝勢。




先手逆襲 ▲C1キリン打


▲C1 きりん打 まで



▲B3ゾウ、△A3ゾウ打 (他にも勝ち手順多数)、
▲C4ライオン、△B3キリン (他にも勝ち手順多数)、
▲同ライオン、△B1ライオン(唯一の妥当手)、
▲C1キリン打(!!)

ここで強襲される。とってはいけない。
▲A2ライオン以下で即負けになってしまう。

ここさえしのげばあとは駒得がものを言う。
こまをただ取りされるような変な手を打たず順当に指していれば何をしても勝ち。







後手勝ち

△B3キリン上 まで


△A1ライオン、
▲C2キリン、△B1ひよこ打、
▲C4ライオン(▲C1キリンは△B2ひよこ以下詰み)、△B2ひよこ、

▲B2キリン(取らないと△B3ゾウ まで)、△同キリン、
▲C2ひよこ、△B4キリン、
▲C3ライオン、△B3キリン上

まで74手で後手の勝ち。
先手のライオンがキャッチされるまでやると76手で後手勝ちになる。


6 件のコメント:

  1. あかちゃん2013年6月18日 10:37

    おみごと 非常に参考になる解説でした。

    返信削除
  2. △B2キリン打、
    ▲B4ライオン、△A2キリンのところ

    △A2キリン上がる ではないですか

    返信削除
  3. 確かに紛らわしいですね。直しておきました。

    返信削除
  4. >△B2キリン、▲同ゾウと進み後手勝ちになることは変わらないのだが、紛れるので 同手数なのだが △A1ライオン よりは ”△A3ライオン” の方が良いと思う。
    このA3ライオンが良くわからないのですが、C1ライオンの間違いとかでしょうか?

    返信削除
  5. △C1ライオンの間違いですね。訂正しておきました。△B1でもいいのですが、手数の関係でC1の方が自然に本譜に合流します。

    返信削除
  6. つまり、先手番で勝つのは、後手番が誤ったからですな。

    返信削除